【快眠コラム】旅先でもぐっすり眠るには?

2023年8月11日

神川 康子

旅先でも快適に眠りたい


夏は旅の季節でもあります。国内外の旅行で、ホテルや旅館で眠ろうとすると「やっぱり枕が違うから眠れない」と思う方々も結構多くいらっしゃいます。

私も旅好きで、ホテル、旅館の部屋に入ると、まずは枕と寝間着(パジャマや浴衣など)、敷布団、マットレスをチェックします。嫌な客ですね。

せっかく素敵なお部屋、お風呂、お食事でも、睡眠環境が「う~ん?」となると、リピーターにはなりにくいものです。

そんな時、備え付けの予備まくらや、クッション、座布団、バスタオルなどを使って、少しでも心地よくなるようにアレンジしています。

和室の布団が薄くて押し入れからもう一枚出して重ねたこともあります。

互いの配慮で良い睡眠を

若い時はどんな条件でも眠れましたが、年とともに五感は鈍ってくるのに、睡眠環境には敏感になります。

多世代同居で、耳は遠くなっても夜間の騒音には敏感で、若者世代の生活音で夜眠れないは「あるある」の話で、世代間相互の理解はここでも必要なのです。

高齢者は睡眠が深くなりにくく、些細な事で目覚めてしまいがちなので、大家族での旅行や里帰りでも配慮があると祖父母に喜ばれるかもしれません。

浴衣は素敵でも…

 

また、寝間着ですが、若い時は「浴衣が選べる旅館、素敵!」と思っても、寝るときは帯の結び目、パジャマズボンのゴム、上着の大きいボタンなどが寝返りで刺激になることがあります。

身体に刺激を与えないルーズな着心地を求めます。

枕もパジャマも持参すれば良いという話ですが、せっかくのリフレッシュ旅、大きな荷物のストレスも小さくしたいですね。

「安眠」をいつでも確保したい

このように、寝室環境が変わったら眠れないことを、専門的に言えば「ファースト・ナイト・エフェクト」(第1夜効果)と言います。

人間の防衛本能による慣れない環境に対する警戒心による心理不安から来るものなので、引っ越し後のように慣れれば良いのですが、毎日宿が変わる旅で眠れないのは困りますよね。

できれば、ホテルや旅館で睡眠環境をカスタマイズしたい人には、寝具などの複数アイテムを提供してもらえたら嬉しいし、快適睡眠環境にできれば、きっとリピーターになりそうですね。私だけでしょうか。

睡眠中こそ無防備な環境ですので、ご自身で、ご家族で「安心・安全」な環境づくりを心がけて「安眠」を確保して頂ければと思います。

直近の日本における睡眠課題とは

世界に目を転じると、安眠できない最悪な環境は「戦時下である(命の危険)」、「命を繋ぐ食べ物が無い(健康の危機)」、「安眠できる家や場所が無い(心の安定)」が確保できない時なのです。

現在の日本においては、世界的な政情不安や物価高による日常生活の不安はあるものの、直近の睡眠環境の課題は風水害などの災害で避難生活を強いられたり、猛暑の中でも熱中症等にならない睡眠環境を確保し、健康の維持や回復、災害からの生活の復興を図り、支えあう事も大切なのではないでしょうか。

執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。