【快眠コラム】お酒を楽しみつつ、しっかりと睡眠を

2023年9月29日

神川 康子

満月を見ながらお酒をたしなむ

今日9月29日は「中秋の名月」で、「満月」とも一致しているそうです。

年によって両者が一致することもあれば、ズレることもしばしばで2024年は名月17日、満月18日と1日ズレるそうです。

宇宙の神秘も感じながら、現実的には「満月の名月」を見上げながら、縁側で、すすきとお団子を飾り、月見酒といきたいものです。

今日は金曜でもあり、猛暑も納まってきたので、コロナ禍では我慢していた仲間との飲み会、食事会という人もいらっしゃるでしょう。

お酒を悪者にしてほしくない

秋の風情に(酒ではなく)水を差すようですが、「快眠コラム」なので、「眠りとお酒の科学」に触れて、「飲んだら乗るな」「酒に飲まれるな」「ナイトキャップはほどほどに」という事にもご理解を頂き、お酒と上手にお付き合い頂き、いつまでもお酒を好きになって頂きたいと思います。

私は7月末まで県の公安委員(県警の指導的立場)を3年間務めさせて頂く一方で、地域の「地酒を愛する女性の会・会長」も仰せつかっています。

県警での様々な事件や事故の報告の中で、想像以上に居眠り運転、飲酒運転が多いことに驚き、お酒を悪者にしてほしくないという想いを強くしました。

お酒は家族や仲間と楽しんだり、疲れを癒し、リラックスしたり、明日への活力に繋がるものであってほしいとの願いから、「飲酒・居眠り運転撲滅」のために、車を運転する際の飲酒・居眠りがいかに危険かを科学的に理解してもらうことが重要と伝え続けてきました。

「血中アルコール濃度」といって、アルコールが体内の血中に移行した状態の濃度によって、爽快な気分からほろ酔い、酩酊、泥酔、昏睡に至るまでの段階を決める指標があります。

「私はお酒に強い」とか「弱い、飲めない」という自覚だけでなく、飲酒量も度を越せば、誰でも命の危険にまで及ぶ事を飲む方も誘う方も知ってほしいと願います。

昔は一気飲みで昏睡状態になる若者もありましたが、お酒が脳の呼吸中枢を麻痺させて死に至ることがあると伝えておかなければならないと痛感しました。

またアルコールの血中濃度(%)と、取り締まりで測定される呼気中アルコール濃度(mg)は異なり、0.03%、0.15mg以上の違反点数は13点、0.05%、0.25mgでは25点で2年間の免許取り消しとなります。

飲酒運転に言い訳は通用しない

飲酒運転は犯罪ですが、それ以上に危険なのが居眠り運転です。

飲酒と寝不足の「眠気と作業能力」を比較した研究がありますが、実は飲酒以上に突然失神のようにマイクロスリープ(1~10秒の眠り)という眠気が襲うのが寝不足で、作業能力の低下も飲酒以上なのです。

公安委員中には突然眠気が来る睡眠障害がある上に飲酒運転をして事故を起こしたケースに遭遇しましたが、言語道断、知識があればと悔やまれました。

「車で少し寝たからお酒は冷めた」「家が近いから大丈夫」「代行が混んでいたし費用がもったいない」「信号で止まったらつい寝てしまった」「家で飲酒中つまみが欲しくてついコンビニまで」「取り締まりはめったにしていない」等々、言い訳の全部、好きなお酒を敵にまわしています。

お酒と上手に付き合おう

大好きなお酒を悪者にしないように、上手につき合えば、人との絆を深め、ストレスを解消し、リラックスもできます。

飲酒の時間帯も内臓や身体機能に与える影響が日中の方が大きいので、夕暮れ以降で、就寝3時間前までには切り上げて就寝したほうが良いのです。

就寝直前まで飲んでいると、睡眠中に低下する心拍数や呼吸数、血圧も運動している時のように増加し、睡眠でしっかり疲労回復して充電したいところ、寝ながら放電して疲れがとれるはずはありません。

そのような飲みたい日は特別なお祝いや記念の日にして常態化しないほうが良いでしょう。

私がデバイスで睡眠を計測していると、飲酒した日の心拍数は、平均75拍と、通常1分当たり55拍まで下がるところですが20拍以上増えることが分かり、寝ながらウオーキングしていた(夢遊症)みたいと思ってしいます。

今夜はゆっくりお酒を楽しもう

今夜は中秋の満月を見ながら、地元の日本酒を好みの器で頂きつつ、お団子も食べて、就寝90分前には湯船でリラックスして、良い夢を見たいと思います。

明日の生きる力に繋がるお酒を楽しく頂きましょう!

執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。