【快眠コラム】子どもの夜泣き

2024年3月27日

神川 康子

3月15日は世界睡眠の日


今年の「世界睡眠の日」は3月15日(春分の日前の金曜日)でした。

いまや「睡眠の悩み」は世界共通の課題となり、心身の健康維持のために睡眠がいかに大切かをしっかり認識し、家族、職場、国民、世界の人々が、質の良い睡眠をめざすきっかけの日になっています。
とくに世界的にみても睡眠時間が短く、その質も悪いと言われている日本では、9月3日も「good sleep」にかけて季節の変わり目の睡眠の日としています。

ちょうど去年の3月に「春と眠り」からこのコラムもスタートして、季節も一巡しましたが、睡眠研究はまだまだ発展途上ですので、これからも人々を元気にしたいと願うこの「コラム」は続きます。

本当に子どもにとって快適な睡眠環境を作れている?

ところで、コロナ禍や地震、水害などの自然災害を体験してきた中で、近頃は「睡眠」をテーマにしたテレビの情報番組や、睡眠が改善されると謳った飲料、サプリメント、食品など(400種以上)の紹介が多くなっています。
またマットレスや枕、布団などの寝具を紹介する広告や通販などもしのぎを削っています。
ちなみにエムールの商品は人間工学的な研究や感性テストを行って紹介しています。

本来は、睡眠関連商品のどれもが誰にでも効果があるというオールマイティーなものではなく、私達消費者が一人ひとり自分に合うものを自分で見つけていくことが重要なのです。

しかし、商品の多くは購入者である大人目線ですよね。
大人は眠りに悩むと、自分で色々と睡眠関連グッズを試して、自分に合うものを探し、巡り合うこともできるのですが、意外にもの言えない乳幼児や、睡眠・生活習慣がしっかり身に付いていない子ども達の様子や困りごとを周囲は観察できているでしょうか。

寝室環境も寝具も大人の(デザイン)感覚で選び、子どもにとって本当に快適な環境になっているのかは確認しないままかもしれません。
大人の都合ともいえるかもしれません。

「子どもの夜泣き」に関する悩み

その典型例が「子どもの夜泣き」です。
長く続くと親は眠れず「なんで寝てくれないの?お母さん明日も仕事があるのに・・・」と、とても辛いものです。
私も40年以上前に経験ありますが、最近の睡眠研究では新たな知見が得られています。

先日、講演を聴いてくださった親御さんから次のような「ご質問」を頂いたので、「アドバイス」に示すように答えさせて頂きました。

「ご質問」

眠りの浅い子は抱っこで眠りについても、おろすと目覚めてしまうため、抱っこをし続けている場合の対処方法を教えてください。

「アドバイス」

大人にとって子どもが少しでも泣いたりすると、すぐに泣き止ませようとして抱っこしたりする傾向がありますが、子どもにとっては眠りの浅い段階(一晩に何回かのサイクルがあります)において、泣いたり声を発したりすることはよくありますので、5分、10分位は様子を見ていてそのまま寝付くようでしたら、抱っこしたりあやしたりしないようにしたほうが良いでしょう。

すぐに抱っこすると、子どもの眠り自体も浅くなりますし、さらには泣けば抱っこされるという習慣になってしまい、保護者も大変です。
熱があったり痛いところがあったりするような体調のせいではない限り、夜間は少しぐらい泣いていてもぐずってもそのままにしておくと、自分でまた眠るようになり、夜にちゃんと寝るというリズムが身に付いて行きます。

昔の人は昼間の抱き癖を心配しても、夜間は泣くと周囲も気にしてすぐに抱っこしたり授乳したりしていましたが、今は昼間にしっかり愛情のある抱っこやスキンシップをしてあげて、夜は何度か目が覚めても自分で寝るように習慣化して行くと、保護者にとってもだんだん子育てが楽になっていきます。

日本は子どもと同室就寝の家庭がほとんどなので、泣くと気になりますが、できるだけ抱っこは大人が我慢して、様子を見守ってあげましょう。

夜間の授乳についても、空腹で泣くわけではないので、生後1か月位からは中止し、3,4か月位からは入眠前の授乳も止めるようにする方が昼夜のリズムが身に付きやすいようです。

良い眠りが得られる環境のために工夫しよう

子どもにとっての睡眠は成長・発達に重要で、とくに胎児期、乳幼児期の睡眠習慣は脳の発達と密接に関連していることが徐々に明らかになってきていますので、詳細は次のコラムで書かせて頂きます。

親子共々良い眠りが得られる環境のために工夫して行きましょう。

アンケートご協力のお願い

本記事の著者であり、エムールの睡眠・生活研究所の所長でもある神川康子から、アンケートのご協力のお願いです。
できるだけ多くの方々から広くデータを集め、睡眠の質を高めるための生活習慣の取り組みをどのくらいなされているのかを調査しています。
3分程度で完了する簡単なアンケートになっており、結果はこちらのメディアでも開示予定です。
よろしければご協力をお願いいたします。

睡眠の質を改善するための生活習慣改善の取り組みアンケート

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執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。