【快眠コラム】睡眠中の寝相と寝返り

2023年11月28日

神川 康子

子どもの寝相が悪いのですが…

講演後によくある質問に「子ども(夫や妻の時もあります)の寝相が悪いのですが、問題はないでしょうか?」というような内容があります。

親御さんからすると「ベッドから落ちないか」「布団からはみ出して風邪をひかないか」「朝起きたら、(子どもの)姿が見えないので探したら部屋の隅まで転がっていた」など、お子さんや家族への心配から聞かれるのだと思います。

寝相が悪くても大丈夫

寝相が悪いと相談された際、まず安心していただくためにお話しすることが3つあります。

自在に寝返りができている

寝相が悪いということは、筋力があり自在に寝返りができるということです。

新生児や寝たきりのお年寄りなどは、自力で寝返りができないので介助が必要になります。

寝ていても五感が働いている

睡眠中の無意識の中でも五感が働き、暑い・寒い・明るい・うるさいなどの感覚が脳に伝わると体が動くことがあります。

布団の中の温度調節や、眩しさ、騒音を防御するために布団を蹴ったり探したりする行動などが例に挙げられます。

寝ていても五感センサーが正常に働いて、体や寝具内の環境を調節しているのです。

安心して眠れている

以前、「妻の寝相が悪い」と訴えられた男性がありましたので、私はすぐに「安心して寝ておられる証拠です」と答えました。

安心感が無いと眠りは深くなりません。

災害時などの命の危険が迫るような不安な時は、緊張感から眠れないか、寝たとしても眠りは浅く、すぐに逃げられる寝姿になります。

動物も、強くて命が奪われる危険の少ないライオン(ネコ科)などは寝相が悪く、草食系の馬やキリンなどは自然界ですぐに逃げられるように立ったまま眠ります。

寝相は「体力・筋力」、「環境(温度・湿度・騒音・明るさなど)」、「精神的な安心感」に左右されるのです。

眠りを深くするための改善点とは

しかし、寝相や寝返りから眠りを深くするための改善点も見えてきます。

季節差はありますが、一晩の寝返りは20~30回が適切と言われています。

少なすぎても多すぎてもいけないのです。その理由を探ってみましょう。

寝返りが少ない理由

寝返りが少ない理由としては、睡眠時間が短すぎること、睡眠不足が常態的になり睡眠負債が蓄積していること、筋力が低下して動きにくいことなどが考えられます。

自分の睡眠習慣を睡眠日誌やデバイス(時計型の測定器など)で把握してみるのも良いでしょう。

寝返りが多い理由

反対に寝返りが多い人は様々な原因が考えられます。

まず、寝室が適正な温度、湿度になっているかを確認しましょう。

7月のコラムにも書きましたが、夏は26℃以下、冬は16℃以上にした方がよいでしょう。


また、パジャマやマットレス、掛け布団、枕によっても寝相や寝返りは変わります。

フードやボタン、結び目などが気になる寝間着では眠りが浅くなり、寝返りが多くなります。

枕が合わないと、上下左右に動かしたくなったり、いびきや逆流性食道炎を悪化させてしまったりすることもあります。

硬すぎるマットレスでは血流が滞り手足がしびれる、柔らかすぎるマットレスでは寝返りに力が入って眠りが浅くなる、などの症状が現れることがあります。

掛け布団にはかなり個人の好みがあるようですが、軽さ、重さ、肌触り、側生地やカバーの色柄すら就寝前の心地よさに影響して睡眠を変化させます。

良質な睡眠ほど寝返りは適正になる

大学生の睡眠中の寝姿勢を暗視(赤外線)カメラで録画する実験をしたことがあります。

個人差はあるものの、睡眠時間が短いほど上向きだけというように姿勢に偏りがあり、7~8時間の良質な睡眠になるほど適正な寝返りで、上下左右の向きの割合が均等になり、睡眠中の血流改善も図られていました。

寝相で心身の状態を占ったり、タイプ分けをしたりする読み物もありますが、科学的根拠はわかりません。

しかし、急に寝相が変わったとか、のびのび寝ていた人が急に膝を抱えて縮こまって寝るようになったときは、生活環境の変化やストレスが無いか周囲が気にかけてあげましょう。

早期発見が改善のカギ

寝ている時に次のような症状があると、病気が隠れている場合があるため、睡眠の専門医などを受診されることをお勧めします。

  • 下肢に違和感を感じ頻繁に動かすことがある
    ⇒むずむず脚症候群や周期性四股運動障害の可能性があります。
  • 睡眠中にベッドパートナーや周囲の壁などに暴力的な行動をしたり、夢を見て四股や身体が動き、うめき声を発することが頻繁にある
    ⇒レム睡眠行動障害も疑われ、それがパーキンソン病やレビー小体型認知症を予見できる場合もあります。

いずれにせよ、早期発見が改善のカギです。

眠りの見える化をしてみよう

体力や筋力、五感センサーが働く寝返りは元気な証拠です。

朝起きて疲労感が残るような時には、自分の眠りを知るために記録して見える化してみませんか。

きっと眠りを改善する糸口が見えてきます。

アンケートご協力のお願い

本記事の著者であり、エムールの睡眠・生活研究所の所長でもある神川康子から、アンケートのご協力のお願いです。
できるだけ多くの方々から広くデータを集め、睡眠の質を高めるための生活習慣の取り組みをどのくらいなされているのかを調査しています。
3分程度で完了する簡単なアンケートになっており、結果はこちらのメディアでも開示予定です。
よろしければご協力をお願いいたします。

睡眠の質を改善するための生活習慣改善の取り組みアンケート

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執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。